Gender and Religion Research Center(GRRC)

ジェンダーと宗教研究センター

センター概要

■センター長挨拶

 2015年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。そして、よりよい世界を目指すための国際目標として、「持続可能な開発目標(SDGs)」が策定されました。地球上の「誰一人取り残さ(れ)ない」という理念のもと、具体的には17の目標と169の達成基準が定められています。そのうち、目標5に掲げられているジェンダー平等の実現は、貧困、教育、平和などにかんする他の目標とも密接に関わる、きわめて重要な課題です。
 そもそも、SDGsの「誰一人取り残さ(れ)ない」という理念は、「摂取不捨(すべての者をおさめとって見捨てない)」という阿弥陀仏の誓いに通じるものです。浄土真宗の精神を建学の精神とする龍谷大学では、持続可能な社会の実現に向けた本学だからこそのアプローチとして、仏教とSDGsとを結びつけた「仏教SDGs」の取り組みを推進しています。むろん、仏教SDGsにおいてもジェンダー平等は到達すべき大事な目標です。

 近年、さまざまな学問分野において、ジェンダーの視点による研究の重要性が認識されつつあります。しかし、宗教研究の分野ではなお、そうした認識が十分に共有されているとは言いがたい面もあります。宗教もまた、文化や社会におけるジェンダー(不)平等と無関係ではない点に注意を払う必要があります。「誰一人取り残さ(れ)ない」社会の実現のためには、女性や性的マイノリティへのまなざしを欠くことがあってはならず、その点において宗教もけっして例外ではないのです。

 「ジェンダーと宗教研究センター」の目的は、国連が目指すSDGsおよび本学の推進する仏教SDGsの実現の一端を担うべく、仏教をはじめとする宗教研究の知見から、ジェンダー平等に取り組むことです。本センターは、2020年度に人間・科学・宗教総合研究センターの重点強化型推進事業として採択されました。その後、2023年度からは世界仏教文化研究センター応用研究部門の一つとして活動を継続してきました。さらに、今回、運営体制を再整備し、研究活動の活性化を図ることといたしました。
 本センターでは、ジェンダーの視点から、仏教を含む日本および世界の諸宗教の比較や宗教教育・社会実践の調査、宗教の隣接領域にかんする考察などを積極的に展開していきます。そして、これまでの活動を通じて培ってきた他大学・他機関の研究者等との連携・協力関係も活かしながら、ジェンダー平等の実現と性の多様性の尊重に資する研究をさらに促進し、その成果を広く国内外に発信することで、よりよい社会作りに貢献していきたいと考えています。

ジェンダーと宗教研究センター
センター長 安藤  徹 

■研究体制

当センターでは、下記のような視座から研究を進めています。

・グローバルな視点から宗教とジェンダー研究を推し進める。

グローバルな視点から宗教研究を行い、フェミニズム、ポストコロニアリズムなどの動向も踏まえながら、宗教におけるジェンダー・バイアスの問題を明らかにします。そして問題解決のために必要な理論を構築し、ジェンダー平等な世界の実現に向けた提言を行っていきます。宗教研究にジェンダーの視点を取り入れることの意義を明らかにし、研究プロジェクト全体に連なる枠組みを提示します。

・日本の諸宗教におけるジェンダー状況に関する調査研究を行う。

現代日本の諸宗教のジェンダー状況について調査や資料収集を行い、その動向を分析します。各教団における聖職者や聖職者以外の人も含めた職員等に関するジェンダーの状況、性的マイノリティに対する対応、ジェンダーに関する教理解釈などについて研究を進めていきます。日本の宗教組織におけるジェンダーやセクシュアリティへの取り組みについて現状を明らかにし、その課題と可能性について提言を行います。

・ジェンダーの視点から宗教教育について研究を行う。

近代の仏教やキリスト教による女子教育、西欧の影響と日本の「良妻賢母」教育に関する調査や検証を行います。創設以来380年以上の歴史をもつ龍谷大学には宗教教育に関する資料も多く所蔵されており、これらの資料のデジタル化を進めていきます。さらに国内外の関係施設においても調査研究を行い、宗教教育とジェンダー研究のコラボレーションを実現させ、当該分野の開拓を目指します。

・ジェンダーの視点から宗教の公益性に関する研究を行う。

近年メディアや学会において「宗教の公益性(宗教者の社会貢献)」に注目が集まっています。自然災害時や医療の現場など普段よりも生死が意識される場で、あるいは社会や文化の形成といった日常的な側面で、それぞれ宗教は重要な役割を担ってきました。そこにジェンダーの視点を取り入れることで「宗教の公益性」の問題を新たな視座から検討していきたいと考えています。